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zoom RSS 満州国、そしてチベット自治区

<<   作成日時 : 2008/04/16 21:05   >>

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図書館の新書コーナーに船戸与一さんの『風の払暁―満州国演義T』という本があり、中をめくってみると私が生まれて幼少期を過ごした通化という地名が出ていたので、めったに小説など読まないのですが、借りて来て読むことにしました。

話は自由主義者の建築家敷島義晴の4人の息子、奉天領事館参事の太郎、満州馬賊の攬把(頭目)である次郎、関東軍少尉の三郎、無政府運動に傾きかけた早稲田の学生から国策学校の東亜同文書院に移る四郎、この4人兄弟の生き様を通して、張作霖爆死事件のあった昭和3年(1928年)前後の満州をめぐる歴史が描かれています。

関東大震災戒厳令下で無政府主義者大杉栄と伊藤野枝、そしてその幼児を殺害した憲兵大尉甘粕正彦が満鉄に赴任したころのことですが、奉天領事館参事の敷島太郎が隣家の満鉄職員の家に呼ばれて、飲み方をしている場面がありました。満鉄職員は総務課勤務の太郎の隣人堂本誠二と、その後輩の満鉄農務課勤務の別府泰作です。ここで主として話しているのは満洲青年同盟に熱を入れている別府泰三で、太郎は聞き役です。


「石原(莞爾)参謀に心酔していると聞きましたが」
「だと思います。石原参謀は頭が良すぎて、上官だろうと何だろうと、反応の鈍い相手を面罵するようなところがあり、教祖的な人間にありがちな傾向なんでしょうけどね。そのために疎まれることが何度もあったと聞いています。片倉(衷)少尉はそれを補佐しますよ。いずれにせよ、石原参謀はふたつの駒を手に入れた。まえから関東軍には石原参謀の言うことなら何でも従う直情型の花谷正少佐がいますからね。胆力の板垣(征四郎)、智謀の石原、直情の花谷、処理の片倉。関東軍はすべての役者が揃った。あとは待つだけです。」
「何を?」
「何かをですよ」
「どういう意味です」
「わたしはね、今度の恐慌はこれまでの金融恐慌の比じゃないと思っている。ウオール街の株式市場の大暴落なんですからね。これはアメリカだけじゃ収まらない、世界大恐慌に発展すると思っています。日本も酷いことになりますよ。たぶん、農村じゃ娘の身売り程度じゃ済まなくなる。そのとき、満蒙を求める声がこれまでとは比較にならないほど大きくなると思う。関東軍がそれに応えなきゃ、政府は国内世論を押さえきれなくなっていく」
「で、何かとは?」
「それが何だかはわからないけど。何かをね」
太郎は煙草の灰を灰皿の中にはたき落とした。
泰作はコップのウイスキーを飲み干してつづけた。
「石原参謀は何かの機を捉えて一気に満蒙領有に持っていこうとするでしょう。満洲青年連盟は何とかそれを阻止しなくきゃならない。満蒙領有なんて国際世論が赦すわけがないんです。五族協和の独立国樹立しか方法はありません」 (同書351・352ページ)



ここに出てくる満洲青年連盟の唱える五族協和について190ページに満鉄社員会雑誌『協和』に山口重次という人が書いたという一文が引用されていました。

「旧来の省制を廃し、蒙古および東三省を結合してひとつの自治国を形成する。その新自治国の国籍を有する者は、漢族、満族、蒙古族、鮮族、日本人の差別なく等しく自治国の市民として政治に参与する。共同の義務を負担して、人類相愛、共存共栄の理想郷境を実現する」

これは満州国ができる4、5年前の時代の雰囲気です。


いまの一般漢族のチベット問題に対する考え方・感じ方は当時や今の日本人の満洲などへの考え方・感じ方に似ているのではないでしょうか。せっかく膨大な資金を投資して青蔵鉄道も敷設し、全世界から観光客がやってきて、近代的な便利な生活ができるようにしているのにお礼も感謝もしない。それどころが激しく非難・攻撃する。本当に蔵族は恩知らずで、どうしようもない蛮族だ。私たちがときにシナ人、セン人に感じる、そんな心境ではないでしょうか。


だから、「66国乱立か大中華連邦か」という一文で、私はもしもゆるやかな大中華連邦がうまく実現するのなら、これはもう日本人がかつて夢見た五族協和の王道楽土の満州国の再現であり、八紘一宇・大東亜共栄圏の漢族による実現ではないのか、と書いたのです。


  (戦前の日本人はものすごくでっかい夢を描いていたものだと今頃になって気づく マイホーム・ジジの ネズミ)


≪追記≫
「五族協和」の具体的な分担についてはこんな一文も引用されていました。

「日本人は大企業の経営および知能を用いる事業に、鮮人は水田の開拓に、支那人は小商労働に、おのおのその能力を発揮し共存共栄を挙ぐべし」  (このような文書、本当にあったのでしょうか。)

なお、満州国国歌がありました。幻ではないのですかね。
http://www.youtube.com/watch?v=NprDVmFaHU4&feature=related

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本の歴史 04182008
 日本の近代史において、関係国の一次史料が公開されはじめたと何度も紹介している。日本の歴史研究者、歴史学者は米国の史料をあたることはあっても従来は、国内の歴史資料ばかりを対象とすることがほとんどであった。冷戦終結で旧・ソ連の史料が英国の情報機関へ流出というか、旧指導者の金銭を伴う提供だと想像できるが、「ミトローヒン文書」や「ヴェノナ文書」等がある。  これを基にした書籍、日本では未訳のアレキサンドル・コルバキディ他共著『GRU帝国』や、これは読んでいるが、ユン・チアン他著『マオ 誰も知ら... ...続きを見る
つき指の読書日記
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