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zoom RSS 小沢一郎と湾岸戦争――小沢語録B

<<   作成日時 : 2010/02/12 15:26   >>

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 魚住昭の「小沢一郎・思考解剖」を読むと、小沢一郎があの『日本改造計画』を著したころは新自由主義者であったけれど、その後は社民主義者へ百八十度の転換をし、新自由主義の「小さな政府」から社民主義の「大きな政府」へ、安全保障面ではタカ派からハト派もどきへ転換をして、それを手段に政権交代を実現させたというふうに読み取れました。

 その転換のきっかけはというと、新自由主義を掲げて、小沢氏がその書で提唱している理想の首相像、「明確な使命感と権力意思を持ち、かつ勇気を持って実行してゆく」」(P32)首相像を、国民の前で見事に演じて見せたあの小泉純一郎元首相の政治にあったのではないでしょうか。

 新自由主義をかかげた小泉純一郎が、あくまでも社会の勝者の立場に立って首相としての権力を行使したのを目にして、同じ新自由主義を主張していた小沢一郎は弱者を含めての国民目線に立って、「国民の生活が第一」というスローガンを思いついたのではないでしょうか。

 ですから、小沢の描く首相像自体には変化はなく、今でも「明確な使命感と権力意思を持ち、かつ勇気を持って実行してゆく」首相像を思い描いているに相違ありません。小泉との違いは権力を行使する際に、弱者を切り捨てるか弱者を含めるかという点にある、今の私はそのように考えています。


 ところで、90年代の小沢は「万能に近い権力を握っているはず」のわが国の首相が「万能どころか“半能”の権力さえ持っていない」(P18)と感じ、首相が権力を行使せずに、混迷の事態を放置した具体例として、湾岸戦争1990.8〜1991.4)のときに、「実効的な貢献を期待したアメリカの要求に応えることができなかった」(P35)わが国政府の対応のまずさを具体例を挙げて指摘しています。(湾岸戦争のときの内閣は海部俊樹で、小沢は自民党幹事長でした。

      まず、アメリカは日本に軍用物資を運ぶ輸送機の派遣を要請してきた。それに対すて日本政府はあまり
     検討の時間をかけずに「ノー」の答えを出す。次にアメリカは補給艦を要請する。これも「ノー」。軍用のタンカ
     ーはどうか。またまた「ノー」。それでは船を。これに対しては、日本国籍二隻、米国籍一隻の計三隻を出し
     て応じたが、出港した九月末は輸送需要のピークを過ぎていた。さらに、アメリカは掃海艇の派遣を要請し
     てきた。政府は憲法上の観点から「ノー」と答えた。最後には政府は掃海艇を派遣したが、戦争が終わって
     からであった。このように、政府の対応が遅すぎて本当に必要なときに協力できなかったのである。
      ≪その他の具体例―引用者箇条書きに≫
      ・アメリカ国内基地からサウジまでの物資と兵員の緊急輸送協力→最終結論は輸送に所要日数7日間
       のもの。
      ・日本の民間航空機の軍事利用→日本政府はアメリカ航空会社から80数便をチャーターでアメリカに提
        供。
      ・難民移送のための自衛隊機の派遣→離陸直前に行きながら、土壇場で政府はゴーサインをだせず。)
       (P34〜35)


 このようにわが国は軍用物資を運ぶ輸送機の派遣などの実効的な協力はしませんでしたが、130億ドルもの資金的協力をしたのでした。その点については小沢はどう評価しているのでしょうか。

      日本国内には、アメリカは破局同然で戦費もないのに日本やドイツのカネで戦争をしているという声が一
     部にあった。これは明らかに間違いである。アメリカが日本に要請してきている項目で、資金協力は四番目
     か五番目の優先順位にすぎなかったことを知るべきだ。むしろ日本の方が、人員を一人も現地に派遣でき
     ないので、なんとかカネだけで済ませてくれという姿勢だったのである。日本は自ら望んでキャッシュ・ディ
     スペンサー(現金自動支払い機)になってしまった。その結果、百三十億ドルという巨額な資金を提供する
     羽目になった。この点を勘違いしてはならない。
      金額については議論があるようだが、私は高いと思う。一人前の国家として国際的な安全保障に協力で
     きず、資金提供だけでお茶を濁そうとすると、こういうことになってしまう。……。
      (一段省略)
      湾岸戦争以来、アメリカでは「同盟」という概念に該当する国は、湾岸戦争で生死を賭して戦った二十八ヵ
     国ということになっている。もちろん、日本はその中に入っていない。日本は、アメリカが心情的に思い描い
     ていた「同盟」という概念から離れてしまったのである。(P35〜37)


 ここを読むと小沢のわが国安全保障の政策面についてはあきらかにタカ派の考えでしょうね。その小沢がいまはどちらかというとハト派であった旧社会党グループと強く連帯しているのですから、山口二郎は「タカ派からハト派もどきへ転換した」と評しているのです。

 それならなぜ小沢はタカ派からハト派もどきに変節しても平然としていられるのでしょうか。それはどうも経世会的政治家の体質と大いに関連がありそうです。

 1972年の田中角栄内閣の成立までの戦後のわが国の首相は石橋湛山を除いて、すべて東大、京大を卒業し、高級官僚を経て政治家となったエリートばかりだったそうです。官界や財界も旧帝国大学出身者が仕切っていましたから、首相はその学閥によって政官財界の頂点に君臨していたのです。「帝大出身の政治家を帝大出身の官僚が支え、経団連に集う帝大出身の財界人たちが政治資金を供給する。それが従来の五五年体制だった」と魚住昭は「思考解剖」(第四回)に書いています。

 ところが、この体制は牛馬商の息子で高等小学校卒の田中角栄による政権奪取でひっくり返ったのです。

      田中は首相を辞めた後も、最大派閥の力で政界に君臨した。田中引退後も竹下、金丸、小沢から梶山静
     六、野中広務に至るまで、旧帝大とは無縁の旧田中派の政治家たちが政治の主導権を握り続けた。しかも
     彼らは、小沢ら二世議員を除けば、みな地方出身のたたき上げである。極端な言い方をすれば、田中政権
     以来、日本の政治は平等志向を内包した非エスタブリッシュメント出身者による「土着的社会主義」の色合
     いを持つようになった。マスコミが強調する経世会の金権体質はその一側面にすぎない。


 その魚住昭は佐藤優に「経世会思想の本質は何なのでしょう」と質問し、佐藤は以下のように応えています。

     佐藤 徹底したプラグマティズム(実用主義・道具主義)。現実に役に立って、結果を出すものが正しいと
     いう思想ですね。正しいものは必ず勝つ。しかし、今までのプラグマティストというのは、(足し算やかけ算
     の)四則演算しかできないんです。ところが小沢さんは(もっと高度な)偏微分ができて権力の文法が分か
     っている。だから一見不規則なことが生じてきても、それを文法に則して再整理できる力がある。つまり時
     代の変化に対応する能力がある。往々にして経世会の政治家にはそれがない。だから途中で沈んでいくわ
     けです。私は鈴木宗男さんを横で見てきたからわかるけど、小沢・鈴木の二人は非常によく似ていますね。

     佐藤 この先どう変化するかという見通しがきいて、その変化に合わせて身を処すことができる。おそらく現
     役の政治家ではこの二人しかいないと思うけれど、二人には内閣官房副長官と、自民党の総務局長の両
     方をやったという共通点がある。官房副長官というのは、政治の表の世界で、比較的若い世代の政治家の
     位置から全体像が見える。官房機密費を含めて、表の裏世界もわかる。それに対して、自民党の総務局長
     は、選挙区調整と自民党の裏金まき、あるいは公明党対策をやる。これはほんとうの裏世界です。その二
     つをやった経験がある、類い希な政治家なんですよ、あの二人は。

     佐藤 その両方を見てる。じゃ二人がどうしてその役に就けたかというと、さっき言ったように、時代の変化
     に対応して身をかわすことができる、類い希なプラグマティストだからですよ。そしてものすごく醒めていて、
     権力闘争に非常に敏感だからです。食うか食われるかしかない世界では食う側に回らなくても、食われな
     いためには権力を持たないといけない。政治は怖くないといけないということを良くわかってる人たちなんで
     す。

     http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100204-00000303-gtwo-pol魚住昭「小沢一郎・思考解剖」


 中国古典である「漁父之辞」の中で、一人の漁夫が「聖人は物に凝滯せずして、能く世と推移す。」(「聖人は物事に拘らず、世と共に移り変わると申します。)とつぶやくところがありましたが、「世と共に移り変わる」小沢はひょっとして聖人なのでしょうか、それとも恥ずべき変節漢なのでしょうか。


            (東北人は天皇家がわが国を支配する以前に日本列島に生息していた「縄文人」だそうな。
             西南人の私も辺境の地のネズミだからそうかもしれない 原始ニホンからいる縄文ネズミ)

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2010/08/25 15:12

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